女神たちのTAOー老子道徳経

老子道徳経-第36章-極まれば反転する

老子道徳経

第36章

何かを小さく縮めたいなら

いっぱいいっぱいにまで広げればいい

何かを弱体化させたいなら

いくところまでその強さを誇らせればいい

何かを廃れさせたいのなら

いくところまで流行らせればいい

何かを奪いたいのなら

もういい、というまでそれを与えればいい

 

それは、微細で明らかな法則だ

やわらかく、弱弱しいものは

かたく、強いものに勝つ

 

魚は深い淵にいるのがいい

ほんとうに大事なもの、明晰な智慧は

ひけらかすものじゃないから

 

 

すべては

極限まで達すると必ず反転する

登り詰めた坂道は、下るしかない

栄枯盛衰

盛者必衰

それは例外のない法則

その状態を極限まで続けさせれば

そのうちひっくり返る

 

歴史上、栄華を誇った王朝が

必ず滅びてきたように

欲しがりすぎれば

すべてを失うことになる

 

この社会において

弱さは罪だと言われてきた

強さが正義だと教えられてきた

それで

権力という強さを極めた結果

この世界はおかしくなってしまった

 

剛を制するのは柔

鋼の武器で水を切ることができない

でも、水はやがて鋼を穿つ

硬いもので柔らかなものを

断つことはできない

 

すべてのものの根底にあるのは

そんなやわらかで微細なはたらき

わたしたちがどんなに強くなったつもりでも

どんなに万能になったつもりでいても

そのやわらかで微細な力には

とうていかなわない

 

行き過ぎたものは、必ず失われる

それが好ましいものであろうと

好ましくないものであろうと

 

微細でたおやかな

タオの力は、つねに深淵な場所から

あらゆるもののバランスをとるようにはたらいてる

 

かみゆりら

 

将にこれを歙(ちぢ)めんと欲(ほっ)すれば

必ず固(しばら)くこれを張れ

将にこれを弱くせんと欲すれば

必ず固くこれを強くせよ

将にこれを廃せんと欲すれば

必ず固くこれを興(お)こせ

将にこれを奪わんと欲すれば

必ず固くこれを与えよ

 

是れを微明(びめい)と謂う

柔弱は鋼強に勝つ

 

魚は淵より脱すべからず

国の利器は以て人に示すべからず

(老子 金谷治著 講談社 書き下し文より引用)