女神たちのタオイズムー老子道徳経

老子道徳経-第57章-そうなるように、できている

老子道徳経

-第57章-

 

国を治めるには正しさを以て

いくさをするなら奇策を以てというけどね

天下を取るなら

ことさらなことをせず

あるがままにまかせることが大切だ

 

なんでそんなことが言えるのかというとね

 

きびしい取り締まりが多くなると

人びとはどんどんすさみ、貧しくなる

便利なものが多く使われるようになると

社会はますます混乱する

人びとがさかしらな知恵を持つようになると

悪事が横行するようになる

法令が細かく定められると

盗賊が多くなる

 

だから、タオの人はいう

 

わたしがことさらなことをせず

自然なあり方でいれば

人は自然と感化されてくる

わたしが静けさを大切にすれば

人は自然と正しい行いをする

わたしがことさらなことをしなければ

人は自然とゆたかになる

私が無欲であると

人もまた、自然と素朴になる、と

 

神遊りら 訳

 

 

ここでは、天下を治める、とか

政治のことをいってるけど

わたしにはあんまり政治のことはわからない

 

ただ、これって子育てとよく似ていると思うの

 

子どもに

あれはダメ、これはダメって

厳しく禁じていると

フラストレーションと欲望がどんどん募る

 

私はバカ母の極みだったから

こと細かに指示したり教育することで

子どもを導けると思ってた

 

まあ、今になってみると

そんなこと全然したくなかったんだけどね

社会から、子育てとはそういうものだと

そうしなきゃいけない、と教えられたから

 

まあ仕方なかったけど

子どもたちにはわるいことした、って

ずいぶんと悔やんだ

 

たくさんおもちゃを与えられた子どもは

自分で工夫して遊ぶことをしなくなる

次々に新しいおもちゃを欲しがる

知識が増えると

こずるいことを考えるようになる

 

今の便利な社会は

物質的なゆたかさと引き換えに

ほんとうに大切なものを失ってる

 

管理され、統制されてきた人間は

必ず

そこからの逃げ道を見つけ出そうとする

そして、何も信頼できなくなる

 

管理やコントロールは

信頼の欠如から来ているからだ

 

ことさらに管理し、コントロールしようとすればするほど

それはコントロール不能になっていく

 

タオのあり方からどんどん離れていく

 

そもそも人は

生まれたままの赤子の状態であれば

社会に捻じ曲げられず

純朴なままであれば

勝手に、当たり前に

健全に育つようになってる

 

それを

知識で、常識でどんどん捻じ曲げていく

親にされたように

その親もまた、そのようにされてきたから

 

今の社会で

ことさらなことをせず

今に満足し

ムリに良くなろうとせず

自分自身の静けさを保つことは

社会の風潮から大きくはずれてるだろう

 

社会の常識に従わないことは

とてもこわいことだよね

だから、みんなそれを難しいという

 

でも今、その「常識」の「不自然さ」が

きわまってる

 

「社会の常識」から自分の未来を

「自動的に」選択するのは

とても危険なことになってる

 

周囲の雑音をシャットアウトして

自分の静けさにアクセスしてみて

 

その静けさをみつけられたら

そして

その静けさの中で過ごす時間が増えていったら

わたしたちは

ことさらなことをしなくても

自然とゆたかになる

いや、もう

すでにゆたかであることを知るだろう

 

何のコントロールもいらない

ただ、くつろぎに身をまかせることによって

すべてが為されていくことを知るだろう

 

あそびをせむとやうまれけん

 

神遊りら

 

 

 

正を以て国を治め

奇を以て兵を用い

無事を以て天下を取る

 

吾れ何を以て其の然るを知るや

此れを以てなり

 

夫れ天下に忌諱(きき)多くして

民弥々(いよいよ)貧しく

民に利器多くして

国家滋々(ますます)昏(みだ)れ

民に智慧多くして

邪事滋々(ますます)起こり

法令滋々(ますます)彰らかにして

盗賊多く有り

 

故に聖人は云う

 

我れ無為にして民自ずから化し

我れ静を好みて民自ら正しく

我れ無事にして民自ら富み

我れ無欲にして民自ら樸なりと

(老子 金谷治著 講談社 書き下し文より引用)