わたしには妹がいる
いつも笑顔を絶やさない
明るい妹だ
でも彼女の人生は
苦難の連続
今もその渦中にいる
どうしてそんなに苦難に遭いつづけるのか
彼女はほんとうに慈しみ深い
やさしい人だ
なのに、なぜ、と
とても大切な人だけに
彼女が置かれている状況を聞くにつけ
心が痛み憂いてしまう
なんとかしてやりたいと思う
久しぶりに電話で話していて
彼女はこう言った
「物心ついたときから、私はすべてをあきらめている」と
「人には期待をしないようにしている」と
「生きていてよかった」
と感じたことはないなあ、と
それを、淡々と
微笑みながら言う
わたしはかなしかった
大切なひとが、闇の中にいるのに
何もできないこと
彼女はわたしにも
何の助けも求めず
期待もしていないこと
求めてくれれば
わたしは全力で彼女のために尽力するだろうに
でも、彼女は言う
「今、そんなに悪くない」と
「とても穏やかだから」と
わたしとて、苦難の連続の人生だったと思う
ただ
いつのときも
何とか苦を楽に転じさせようと
努力しつづけた
葛藤し、泣き喚き、もがきにもがき続けて
そして今やっと
静寂に身を置くことができるようになった
「だれにも助けを求めない」
「すべてをあきらめている」
「生きててよかった、と心底感じたことはない」
「そうね、わたしの闇は深い」
と妹はいう
これは
少し前のわたしだ
わたしは
自分の中の闇を消すことに
全エネルギーを注いできた
それは、とても苦しかったけれど
多大な熱量があった
闘っていたからだ
でも、妹は
自分の闇を
とてつもない寂寥感を認めている
そして、それとともに生きている
彼女は、これでいいと受け容れている
誰が見ても、困難な状況
でも
今が悪くない
穏やかだ
と微笑む彼女の言葉に
偽りも無理も見当たらなかった
わたしは
これでいいのだ、と感じた
この世で起こっていることには
ほんとうに何の意味もないのかもしれない
どんな場所であろうと
自分の居場所
自分の落とし所を見出し
起こるすべてを受容れているのなら
でも
祈らずにはいられない
彼女に
「生きていてよかった」という瞬間が
当たり前にもたらされることを
あそびをせむとやうまれけむ
神遊りら