星の記憶の物語

リラの女神たちへ

あまたある宇宙物語の中で

リラの星は崩壊し

今は存在しないと言われる

 

それは、遥か昔に失われた星

リラの星の残骸であると言われるM57星雲とか

 

それは

そうかもしれないし

そうでないかもしれない

 

ただ

物体としての星を

存在させるのは意識

 

物質というものは

意識のはたらきの結果にすぎない

 

フィクションも

多くの意識がそれを信じれば

ノンフィクションになり

「科学」と呼ばれるものになる

 

リラの記憶にかかわりのある人は

言い知れぬさびしさを抱えている

 

それは

自らの愚かさゆえに

故郷を失い

あてどもなく宇宙を彷徨う旅を選ばざるを得なかった

そんな哀しみの記憶から来るのか

 

あるいは

星を愛しすぎたゆえに

星とともに果てることを選んだ記憶によるものなのか

 

あるいは

悦びの星を殺戮の星に変えてしまった罪悪感からなのか

 

いずれにせよ

いちばん大切なものを失い

罪悪感と無価値観を抱えたまま生きる

さまよい人

それがリラ人が背負うべき運命だった

 

永い永いときの中を

分離した世界を彷徨いながら

再び統合へと向かう

リラの意識の旅

 

そして今、ここにたどり着いた

ときは今

リラの女神たちよ

今こそ

内なる衝動に氣づきたまえ

私たちは

罪など犯してはいなかった

 

過去の記憶のすべては

今ここのためにある

 

すべては今

この大きな重力の中で

この重たい肉の袋に入りながら

 

その制限の中で

私たちは想い出す

 

あらゆる知識や努力はもはや不要となった

あるがままに、ただ生きる

ただそれだけでいい

 

防御という重い鎧をすべてを脱ぎ捨てたとき

わたしたちはすべてであることを想い出す

 

リラ・サクヤ・アンフィニ